2016-2023

写生を基にして作品を制作する事を辞め、写生を実際に描くだけでなく広い意味でとらえ、日常で起こる様々な「モノやコト」から感じた事なども写生としてとらえる様になった。その結果、作品の対象はモチーフ、素材、事象などより様々なものが対象となりうる様になり、一つの作品に対象を重層的に描く様にもなった。作品としては、箔をメインに使用したー刻シリーズーを中心に制作を始めた。刻シリーズも当初は小さな画面にどれだけの密度を込められるかを意識して始めたシリーズではあったが、思いもよらず「刻シリーズ」でのコミッションの話を頂き(Aokiの作品)、自身の意図しない形で大きな作品を制作する機会を得た事で、自身でも新たな可能性を発見し、より大きな作品でも描く様になっていった。

「刻シリーズに寄せて」

Aoki(Singapore)の作品に寄せた文章。

時間の経過と共に黒ずむ銀。時の流れを意識する中で、素材、対象、作者の声に耳を傾けながら、一期一会に立ち現れる現象を「刻む」行為。けして止める事の出来ない時の流れに、その一瞬一瞬を止めようとする行為。「刻(とき)」を蓄積する行為。